ノロウイルスが全国的に猛威をふるっているとテレビや新聞で報じられています。大阪府下も例外ではありません。
大阪府の発表によりますと、今年11月に入ってノロウイルスによる感染集団食中毒が急増し、12月6日のまとめでは、11月中の発生が20件623人(10月では4件58人)と急激に増加しているとのことです。
今後も予断を許さない状況だと判断し、関係部署では厳戒体制が取られているとのことです。
これまでに公表された発生場所には、社員食堂や保育園などもありますが、その多くは外食店舗になっています。
大阪府などへ報告された食中毒発生場所は、企業名、代表者名などをインターネットなどで公表され、新聞やテレビで報道されることもまれではありません。
企業にとっては、信用・信頼を一気に欠く事柄でありますので、全社をあげて食中毒発生防止に取り組んで下さい。
【1】ノロウイルスの感染源
①食材から人へ
常識的には二枚貝の生食によってのみ感染するととらえられています。
もちろんそれも重大な感染源の一つであることに変わりはありません。
②人から人へ
最近の傾向を見ていますと、食材からの感染よりも保菌者が調理した、又は罹感者から排出された汚物の処理や消毒の仕方が不適切であったために、二次的な人から人へ感染が広がったケースが多いように見受けられます。
※二枚貝の使用とは全く関係がないからと安心はできません。
大阪府公表の事例の中には、今年7月吹田市内の製菓工場で製造し各所へ配送された洋菓子によって、ノロウイルスによる食中毒が発生しています。
※ノロウイルスによるものと認定され公表された府下7件の食中毒で、提供されたメニューを調べると二枚貝の生食はもちろんのこと、食材として使用し提供した店舗は1件もありませんでした。
【2】ノロウイルスの怖さ
ノロウイルスは、10~100個という微小な量でも感染し、人の腸管内でのみ増殖する(貝や食品中では増殖しない)という特性を持っています。
洗浄したから大丈夫だと調理や接客の現場で簡単にすませていると、手指や調理器具・食器などに残っているウイルスによって二次感染するケースも多いということです。
又、幼児や高齢者が感染すると、余病を併発して死にいたることもある恐ろしいウイルスでもあります。
手指や器具の洗浄方法、消毒にも十分に配慮して下さい。
【3】予防方法(大阪府発行のリーフレットから)
①食品は加熱調理する(中心温度85℃1分間以上)~ノロウイルスの失活化
②カキなど二枚貝の生食は避け(特に食品取扱者は自らも喫食しない)、中心部まで十分加熱する。
③下処理のまな板、包丁、ふきん等は専用とし、使用後は十分に洗浄消毒する。
④手指の洗浄・消毒(調理前・食事前・トイレの後)~石鹸をよく泡立て手首まで丁寧に洗う。
⑤下痢などの症状がある場合は、食品の取扱いに従事しない。
⑥罹患者のふん便や嘔吐物は乾燥しない内に手袋等を使用して処理し、
次亜塩素酸ナトリウム(希釈方法は別紙参照)で十分に消毒する。
【4】食中毒の報に接した時の対応
①お客様から直接クレームを受けた場合
店長自ら、又は他のスタッフから報告を受けた場合お客様から「食中毒にかかった」とのクレームに接したときは、食中毒か否か分からない。 また自店の食品が原因かどうかも分からない時であっても、自店の食品が原因で発生したもの、と考えて対応するほうが後のちのためには好結果を生むことにつながります。
○まず、お詫びすることから始める
※「謝罪すると非を認めたことになり、責任問題が生じる」という人もいるが、それは見当違いです。
お詫びの言葉は会話の潤滑油の役割もする。クレーム対応を滑らかに進めていくためにも、当店の食事が原因だと信じているお客様へは、まず、「それは申し訳ないことをいたしました。
お体の具合はいかがですか。」などの言葉を選んで謝罪することから始めた方がよい。
○お客様の名前・住所・連絡電話番号を教えてもらう。
○何時、何人でご来店されたのか、何を喫食されたのかお尋ねする。
○身体不調の状態と、いつ症状が出たのか、医者の診断を受けたか否かを聞き、
診断を受けていないのであればすぐに医者に行くように勧める。
○食中毒は店にとって重大事であることを簡潔に説明し、本部へ報告した上で対応する旨を丁寧に告げ、
独断で賠償の話をしないこと。
○本部への報告~主観意見を混えず、客観的な事実を報告する。
○保健所への問合せをする~クレームがあったことを告げ、他に保健所へ届出ている者がいないか確認する
○自店の管理をすぐに行う。
・クレーム客の来店事実をチェックし、把握する
・同一食品の販売個数のチェック
・調理担当者を主体に、スタッフ全員の健康状態をチェック(必要であれば緊急検便を実施)
・調理器具類の現状保管を確実にする
・サンプル食品の現状保管と管理
・衛生管理自主点検チェック表、シフト表その他の管理チェック表を取りそろえ保管
○クレーム顧客宅の訪問
本部と相談し、できるだけ早く相手を訪問すること。ただし、原因不明の時点での具体的な賠償の話にはできるだけ触れず、
責任を持って調査し、早期に回答することを告げる
○ORAトラブル相談窓口へ相談するのも一方法
②保健所の特別立ち入りによって認知した場合食中毒発生容疑店舗として保健所の特別な立入りがあった場合
医者からの通報(法的な義務)、又はお客様からの通報によって保健所が独自に検査を行い、食中毒の原因となった細菌・ウイルスを検出し、調査を進めて場所を特定し、立入りされたものと判断した方がよい。
保健所の立入りは、発生場所を断定した場合のみ店舗への立入りができるのだと考えないこと。
合理的な推定であっても発生容疑の店舗については立入りをし、指導もできることを知っておいてもらいたい。
こんな場合は、係官の指示に従い、全面的に協力するとともに、素早く本部へ報告し、会社をあげて罹患者の見舞いや賠償に関し、早期に対策を立てておくべきであろう。